1.気質の異質性

世界のポスティング事情

日本から風船を飛ばしても、風に乗って届きそうな距離に中国大陸や朝鮮半島がありますが、それぞれの気質を表すのは、大陸の慢(まん)、半島の恨(はん)、島国の忘(ぼう)とされます。単語にすれば「傲慢(ごうまん)・恨(うら)み・忘却」。言葉も習慣も異なる多種多様な民族が暮らす大陸では、生き抜くためには多民族より自分たちは優秀なのだという過信と傲慢さが必須だったのでしょう。 半島は大陸と陸続きにあることで、常に大陸の国々から侵略されてきた屈辱の歴史を絶対に忘れないとの秘めた決意が、恨みを心底に沈殿させることになったのでしょう。

狭い住空間しかない島国では、他者とは穏便に接触することが不可欠で、嫌なことも悔しいことも、すべて水に流すことが重要な要素だったのでしょう。このように、近隣諸国を見渡しても気質に異なりがあり、感情に温度差があるように、自国の基準を一方的に押し付けることはトラブルの基になります。ポスティングについても、日本の標準を前提とするのではなく、相手国の標準に切り換えておかないと、思わぬ落とし穴にはまる危険性があります。

2.海外の郵便事情

日本のすべての交通機関が時刻表通り、正確に運用されており、3分でも遅れが出ると即時にお詫びのアナウンスがありますが、海外では2時間や3時間の遅延は当然のこととしてアナウンスすらないこともあります。日本の郵便事情は交通機関と同様、集配に不安など感じさせることはありませんが、海外ではクリスマス・カードが晩春に、しかもボロボロの状態で届いても驚きや怒りを感じる人は日本人くらいのもの。しかも後進国や発展途上国での話ではなく、先進国が集中するヨーロッパ全域で大差ないのが実情です。

日本では郵便物の投棄が発覚すれば、即刻テレビ・ニュースになるでしょうが、海外ではニュースになることはないでしょう。国によっては公共事業か民間事業かに分かれますが、いずれであっても郵便物の適確な管理体制など望み薄の状況下では「落とす、忘れる、捨てる」は日常化しているとさえ言えます。

現代社会ではコンピュータの急速な普及にあわせ、旧態然とした郵便制度の活用より、メールでの送受信が一般化し、特に海外では集配が不安定な郵便の活用は衰退しているから、郵便制度の改革・整備が遅々として進まないのでしょうね。その意味で、郵便として配達される広告物より、直接ポストに投函することで確実に到達できるポスティングでの広告効果は高いと思われます。

3.海外のポスティング事情

現在、新聞折込チラシは新聞が発行されている国や地域では一般的に行われている広告宣伝手法ようですが、ポスティングに関しては、多数の専門業者が存在するのは唯一日本だけといえるのではないでしょうか。

欧米では交差点で信号待ちしている車両に対して、通り沿いの飲食店やガソリン・スタンドなどの広告チラシを運転手に手渡しする、いわゆる街頭配布を見かけますが、どの程度の効果があるかは微妙です。日本では道交法違反で摘発される危険性があり、実施している会社は皆無でしょう。

海外で見かけるポスティングの主流は、郵便局(または郵便会社)の配達員がメール・ボックスに数種類の広告チラシの入ったビニール袋を投函する、あるいは新聞配達員が新聞購読者とは無関係に個別のメール・ボックスに広告チラシを投函する方法で、特定の広告チラシの投函もあるにはありますが、広告主の従業員やアルバイトが投函しており、業者に委託することは稀です(そもそもポスティング業者がいません)。

国によっては、広告チラシを郵便物にして、受取人の氏名は未記入のまま、住所と住居番号だけを記載した「Current Occupier=現住者様」宛、要するに誰が住んでいるのか知らないけれど、現実に居住している人に宛てた、一種のダイレクト・メールのようなポスティング手法が採用されています。

日本に類似するポスティングとしては、韓国でのバイク便による広告チラシの投げ込みがあります。どこに投げ込むのかといえば、停車することなく走りながら投げるので、メール・ボックスなどではなく、個宅の玄関先や集合住宅の通路が標的です。彼らが通過した跡には散乱したチラシが、踏まれてゴミと化すのを待っています。

カンボジアのように、メール・ボックスそのものが存在しないエリアの多い国では、当然ポスティングは成立しないと思われるでしょうが、個宅やアパートのドアの前にデリバリーの広告チラシがひっそりと置かれていたりします。広告主の従業員がしたことでしょうが、クレームはないようです。おおらかなお国柄なのでしょうね。

北京市は高層マンションが地平線を埋めるほど延々と林立しており、一軒の世帯数が1千戸を超える大型マンションも数多く、集合ポストのあるスペースに行くと実に壮観ですが、すべてオートロックのため入館できません。管理人に委託する手もあるのですが、法律では官民いずれの集合住宅でも敷地内と駐車場の管理者は、北京市の派遣職員が割り当てられる制度になっており、市の許可が不可避で厳しいです。ともかく海外でのポスティング事業は困難を極めることは必至ですね。