「活字離れ」現象からみたデータ

「活字離れ」が問題になって久しいですが、本当にこのような問題が進んでいるのであれば、チラシの文章もマンガ風やショート・センテンスになるよう工夫が必要となりますが、はたして実態はどうなのでしょうか。

 活字離れ

識字率の高い国や地域において、新聞や書籍などの紙を用いた文字媒体の利用率が低下している現象を「活字離れ」といい、特に「若者の活字離れ」は国家の教育レベルを示す識字率を低下させる危険性を秘めているだとして、大きな社会問題だとされ、国-や地方自治体でも様々な「活字離れ」対策をしています。

2005年にアメリカの民間市場調査会社が調査対象30カ国で調査した「活字媒体を読む時間」のデータによると、

上位5カ国は順番に、インド、タイ、中国、フィリピン、エジプト

下位5カ国は順番に、韓国、日本(27位)、台湾、ブラジル、イギリス

先進国入りを目指している国々が上位なのは理解できますが、教育熱心な韓国や日本の順位が30カ国中26位27位、しかもイギリスが最下位とは驚きました。

この他に、「インターネット利用時間」の調査によると、1位が台湾、2位がタイ。活字媒体では下位の台湾はネット社会化しいるのかもしれませんね。

日本新聞協会の調査では、新聞発行部数は1990年代をピークに、2008年からは急激な下降傾向にあり、書籍・雑誌の販売部数も1990年代をピークに、減少傾向にあったが、2004年に下げ止まりの兆しがみられるとのこと。

この調査では、現在も活字離れに歯止めが効かないのは新聞だけとも読めますが「文字離れ」ではなく「活字離れ」である点に留意が必要なのではないでしょうか。

紙を用いた文字媒体である「活字離れ」の傾向は新聞社や出版社には大ダメージかもしれませんが、ネットやスマホで文字を読み書きする人々は、調査統計の対象外の場合もあり、「活字離れ」イコール「文字離れ」ではないとすれば、識字率には直接影響を及ぼす恐れはないようも思えるのですが。

次で文化庁による「国語に関する世論調査」から考察したいと思います。

読書離れ

2014年の文化庁による「国語に関する世論調査」によると、読書量が,以前に比べて減っているか,それとも,増えているかを尋ねた。読書量が減っている65.1%,変わっていない26.3%、増えている7.4%。過去(平成20年度)の調査結果と比較すると,余り変化は見られない。

1か月に大体何冊くらい本を読んでいるか を尋ねた。 「読まない」の割合が 47.5%と最も高い。 次いで,「1,2冊」の割合が 34.5%,「3, 4冊」の割合が 10.9%,「5,6冊」の割合 が 3.4%,「7冊以上」が 3.6%となっている。 過去の調査結果(平成 14,20 年度)と比較 すると,平成 20 年度調査から大きな変化は見 られない。 平成 14 年度調査と比較すると,「読まない」 の割合は,10 ポイント増加している。

ふだん,電子書籍(雑誌や漫画も含む) を利用しているか尋ねた。 電子書籍を,「よく利用する」(4.6%), 「たまに利用する」(12.6%)を合わせた「利 用する(計)」の割合は 17.3%となっている。一方,「紙の本・雑誌・漫画しか読まない」の割合は 45.2%, 「紙の本・雑誌・漫画も電子書籍も読まない」の割合は 35.9%となっている。

年齢別に見ると,電子書籍を「利用する (計)」の割合は,20 代(31.9%),30 代 (30.7%),16~19 歳(30.5%)において3 割強と,40 代以上に比べて高くなっている。 「紙の本・雑誌・漫画しか読まない」の 割合は,全ての年代で4割台となっている。 電子書籍を「利用する(計)」の割合と「紙 の本・雑誌・漫画しか読まない」の割合を 比較すると,40 代以下では,12~21 ポイン トの開きとなっているが,50 代以上では, 34~38 ポイントの開きが見られる。

総論

データ的には「活字離れ・読者離れ」は現象化していますが、それは紙を用いた文字媒体だけではなく、長文記事を読むには不適な媒体とされるインターネットやスマート・ホーンでの「電子書籍やネット新聞」の読者も減少化傾向にあり、電子媒体の普及と「活字離れ・読者離れ」には関連性が低いと思われます。

このことに関する多種多様な論評がみられますが、それを集約すると、「活字離れ」が新聞社・出版社の読者減少を招いたのではなく、新聞社・出版社の旧態然とした経営を要因として「読者離れ」が生じているとの結論に至ります。

要は、新聞は「社会の公器」だとの自覚、出版社は華やかな文字文化を育成しようという気構え、それらをなくした結果なのではないでしょうか。